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◆◆ side 渉 ◆◆
ソファに腰を下ろし、ふんぞり返って腕を組み、脚を組んだ。
…付け足しかよ。
いや、親父の秘書として…確か4年だったか…。
俺の秘書としては日が浅い。
アイツがあんなふうに言うのは無理もないか…。
俺はまるで自分を無理やり納得させて、自分で自分を慰めているようだった。
…なんなんだ、俺は。
そこにスタッフの一人が俺にコーヒーを出しに来た。
俺はテーブルに置くスタッフに軽く会釈して受け取ると、カップに手を伸ばした。
俺がコーヒーをすするその時、奥からアイツの声が聞こえた。
「…あ。そんな。」
「…や。千草さん。」
「きゃあ。」
思わずコーヒーを噴き出しそうになって、口元を拭(ヌグ)った。
アイツのひ弱な声とは逆に楽しそうな伯母の声。
「ちょっとだけよ。」
「もう少しよ。」
「うん。最高!」
…衣装を合わせるだけだろ。
…何してんだよ?
俺はコーヒーを口にした。
なんだよ、このコーヒー。
……薄すぎだ。
俺の好みは―――。
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