本性

23/49
3368人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
「…風邪、引いてませんか?」 そう言いながら窓から離れて、俺の方にやってきた。 窓からの光の反射を逃れると、やっとアイツの顔が見えた。 化粧っ気がほとんどなくなっているのに、普段とは違う下ろした髪がどこか大人びて見せていた。 返事を忘れていた俺にさらに近付いて、俺を覗きこむように体をかがめた。 「…社長? 大丈夫ですか?」 …かがむのはマズイ。 アイツの胸元を毛先の跳ねた髪の毛がくるくる揺れて隠していた。 俺は余裕ぶってのっそり体を起して答えることにした。 「…大丈夫だ。」 その後一つ咳払いまで足した。 「…よかった。」 俺の返事を聞いて、本当に安心したような顔をして、俺の向かいのベッドに腰を下ろした。 俺はコイツの行動を全く読めずにいた。 男と女という緊張感がかなり欠けていることだけは…間違いなかった。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!