3368人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
「…風邪、引いてませんか?」
そう言いながら窓から離れて、俺の方にやってきた。
窓からの光の反射を逃れると、やっとアイツの顔が見えた。
化粧っ気がほとんどなくなっているのに、普段とは違う下ろした髪がどこか大人びて見せていた。
返事を忘れていた俺にさらに近付いて、俺を覗きこむように体をかがめた。
「…社長? 大丈夫ですか?」
…かがむのはマズイ。
アイツの胸元を毛先の跳ねた髪の毛がくるくる揺れて隠していた。
俺は余裕ぶってのっそり体を起して答えることにした。
「…大丈夫だ。」
その後一つ咳払いまで足した。
「…よかった。」
俺の返事を聞いて、本当に安心したような顔をして、俺の向かいのベッドに腰を下ろした。
俺はコイツの行動を全く読めずにいた。
男と女という緊張感がかなり欠けていることだけは…間違いなかった。
最初のコメントを投稿しよう!