刺客 2

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◆◆ side 望愛 ◆◆ その日の帰り、私は会社の近くのクリーンニング店に寄って、渉さんのシャツとネクタイを預けた。 「あれ、彼氏の?」 私のアパートは会社の近くなので、私は常連だった。 クリーニング店のおばさんは薄いブルーのシャツと私をニヤけた顔で交互に見つめた。 「ち、違いますよ!」 「派手なシミだね。」 おばさんは私の返事を無視して言った。 私はそれに苦笑いを返す。 「でもいいシャツね。安物じゃないわ。ノアちゃん、玉の輿?」 「だから、違いますって!」 「はいはい。じゃ、これ、引き換えね。」 おばさんはいつも通りに伝票をくれた。 明日はまた渉さんとグループの視察で、今回は私の行ったことのない、初めての工場だった。 グループの情報は書面でしか知り得ないので、その場に足を運べるのは本当に楽しみだった。 どんなところで、どんな人たちが働いているのか。 また、渉さんとの車移動。 そのことを楽しみにしてるワケじゃ… …ないはずなのに、 この感覚は… 懐かしい、遠足前の子供みたいな感覚に…少しだけ似ていた。
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