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高速を使うこともなく、一時間ほどで目的の工場に着いた。
守衛のいる門でのやり取りは前回と同じで、守衛が急な社長の訪問に目を丸くしていた。
渉さんはお構いなしで車を停め、私たちは正面玄関から中に入った。
まずは事務棟の総務に挨拶に行き、今日の趣旨を伝える。
一般の社員は渉さん、つまり新社長に会うのは初めてだ。
背筋を伸ばした社員の顔には緊張と焦りの色が見て取れた。
その中の一人がデスクの上の固定電話の受話器を取って、こちらに気を使いながらどこかに電話をかけ始めた。
…きっと工場棟の責任者あたりに連絡をしているのだろう。
渉さんは勝手に見るから案内役はいらないと断わり、私たちは会議室の一室を控え室として準備してもらい、そこから工場へ向かった。
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