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考え始めると何もかもがハルにはふさわしくなくて怖気づいてしまう。
だけど、ずっとここにいるわけには行かないんだし。
はあって息を吐いてととっと部屋に出る。
ベッドサイドの明かりがついてる。
ハルはさっきと同じタオルを腰に巻いただけの姿でベッドに座ってた。
ハルは何か物思いに耽っているみたいだ。少し丸くなった背中。組んだ足に肘をついて顎を支えて明かりの方を見ている。
滑らかで艶やかな健康的な肌を、オレンジ色の明かりが照らしている。
まだ濡れているくせのある茶色の髪。透かす明るいオレンジ色と陰に沈む暗い黒のコントラスト。
榛色の瞳が金色の粒を浮かべてゆらゆらと揺れている。
そうやって動かないでいるハルは精巧な彫像のようだ。
近づきがたい光景に足が止まった。
声を出すことも、近寄ることも出来ずにその場で黙って立っているしかなくて。
気配を感じたのか、ハルが目をあげる。
目があって、顔の赤くなっていくオレに苦笑いを浮かべて手を差し伸べた。
躊躇いながら近づくとハルの手に自分の手をのせた。
「怖くなっちゃった?」
いいんだよ?って感じで微笑む、どこか硬いハルの笑顔を見てぷるぷると頭を振った。
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