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優羽は母親が持ってきてくれた秋服に着替えた。
外出許可をもらい、久し振りに病院の敷地外へ出た。
すれ違う女の人がみんな司さんを見ているような気がする。
やはり長身で端正な顔をしているからだろうか。
本人はそんなのには慣れているかのように何も気にせず歩いている。
優羽は隣を歩く自分を少し恥ずかしく思った。
「手、繋いでい?」
司さんが前を向いたまま言った。
「すぐ着くよ。
隣だし」
優羽は照れ隠しでわざとぶっきらぼうに答えた。
「いいから」
半ば強引に繋がれた。
繋がれた手を優羽はぼーっと見た。
――あったかいな。
この手を心地よく思う。
とても。
優羽は小さく微笑んだ。
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