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◆ 第一章 賭け試合1
俺は夕食を終え、部屋の隅で紅茶を味わっていた。ここは俺の仕事場と生活スペースを兼ねており、天井までの高さが十五メートル程ある。
机の上にあるロウソクの炎がゆらゆらと揺れ、壁に映る巨大な影も揺れる。影の主は部屋の奥にあり、鎧、兜を身につけた巨人が右膝を床に付けるようにして佇んでいた。
巨人の身長は約九メートル。ただ、巨人と言っても生きてはおらず、古代の高度技術を用いて作ったものだ。俺達はそれを機兵と呼んでいる。
操作は腹部にあるコクピットに乗り込んで行う。以前の戦では騎馬が中心だったが、今では機兵が戦の中心であり、所有している機兵の数が勝敗を決するまでになっていた。また、貴族や騎士の間では性能や、美しさなどを競いあっている。
俺はその機兵の修理や製作を請け負う鍛冶屋を仕事としているんだ。最近では改造の依頼が多いかな。自慢じゃないけど良い仕事をするよ。
影の主は俺が制作した機兵で《R―2》と言う。
機体色はメタルブラックの色で統一されており、鎧の淵は黄色で装飾されている。特徴というと額から後方に向かって緩くカーブをしている角が一本ある。子供に人気のある昆虫をモデルにしている。
顔の部分は横にスリットが三本入っている面覆いで隠されており、そのスリットから顔の一部が僅かに確認できる。ただ、機兵の顔と言うのは白い仮面に細長い目が付いているだけの物だ。起動するとその目が黄色に発光する。
腰には剣が装備されているが、俺の住むエイリーン国やサンロッド国など西洋で使われている幅広で厚い剣とは異なっている。細くて、且つ研ぎ澄まされた刃を持つ東洋の剣で刀と呼ばれる。長さは六メートル程あり、長刀の部類だ。
“ドン、ドン”
突然、ドアをノックする音がした。
こんな時間に誰だろう。
扉を開けるとそこにはベージュの長袖シャツに革のベストを重ね着した若い女性が立っていた。
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