執筆序文

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紀元前6世紀末、春秋(しゅんじゅう)時代も半ばを過ぎた頃の中国大陸…周(しゅう)王朝は晋(しん)・斉(せい)・楚(そ)・秦(しん)などの大国やそれらに属する幾つもの小国に分裂していた。 清(せい)は、斉と楚の国境にある沛(はい)を首都とした小国であり、楚と敵対する斉の庇護を受けてその勢力を保っていた。 清候・哉秀(さいしゅう)はまだ若年の21歳であったが、宰相の黒明(こくめい)や参謀の壱真(いつしん)と言った政戦両略に通ずる智謀の士、将軍の宅利信(たくりしん)や勇騎(ゆうき)などの勇将豪傑を従え、他国にもその名を知られ、小国と言えども侮れない勢力であった。 だが現状の清は、斉と従属に近い形で同盟を結んでおり、たびたび斉の要請で楚に侵攻していた。 紀元前598年初春、斉王田修(でんしゅう)の宴に呼ばれた哉秀は、田修から自分の正室である楚姫(そき)を差し出すように言われる。 斉の後ろ盾が無ければ、楚に滅ぼされる…だが、寵愛する妻を差し出すことはできない。苦悩に満ちた表情を浮かべる哉秀…。 物語は、ここから始まる。
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