ありえませんって

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「ゆーり!また陽太がうるさいんだけど、どうすればいいと思う~?」 教室で、携帯片手に溜め息を吐いているのは私の最愛の友達の瑞希だ。 彼女は、成績優秀。顔も優秀と先生に謳われるほどの美女。 髪は、腰まで長い。栗毛色にパーマがゆるくかけられていて、瑞希の髪を見ただけで何故だかモンブランケーキを食べたくなってくる。 そんな衝動に私を駆らせる友達だ。 そして、今彼女が言った『陽太』という人は・・・瑞希の彼氏。 富樫 陽太(とがし ようた)くんだ。 格好良い・・・。しかも優しい、と思う。 瑞希には、もちろん。友達の私にまで優しい。・・・と思う。 本当にできた彼氏だ。 ただ瑞希曰く、難点があるらしい。 同じ学校にいるのに、ひっきりなしにメールを送ってくるらしい。 「いいじゃないの。愛されてるって証拠だよ」 軽く飲み物に口をつけながら言うと、瑞希は可愛い顔で私を睨み付けてきた。 「なに言ってんの!?面倒なだけよ!」 「そんなこと言っちゃ可哀想だよ。それだけ瑞希のことが好きなんでしょ」 イライラしている瑞希に構わず、サラリと言ってのけると、瑞希は片手をバンッと机に叩きつけた。 うわ・・・痛そうだ。 そして、教室の窓際を勢いよく指をさす。 「落ち着いて!瑞希!宇宙船が浮いてる!とか、そういう冗談は聞き飽きたから!!」 「違うわよ!しかも、その冗談はアンタが言ってるんでしょ! 窓際、見て!」 失礼な! 私は海賊船って言ってるのに! 宇宙船なんて言ったこともないのに!! 渋々、瑞希に言われた通り、窓の方に目を向けると・・・ 瑞希に一日何度もメールしてくる彼が、こちらを見て笑っていた。 周りには談笑している友達が居て、彼はその中心にいる。 にも関わらず、毎日毎日傍にいる瑞希にメールを送ってくるんだ。 私だったら、好きな人から何度もメールもらったら嬉しいんだけどな。 瑞希にニコニコと笑いかけているのに、私にもその笑顔を見せてくれる。 ・・・あまり話したことがないから、本当の性格は知らないけど・・・良い人なんだなぁ。 だって、こんな私にも笑いかけてくれるんだもん。 こんな髪がおかっぱの何も特徴がない私。 そんな、存在がそよ風のような私。 日向 悠里(ひなた ゆうり) 勿論、私は脇役側だから自分の紹介は最後にする。  
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