プロローグ

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お母さんが昔、私に言った。 『七瀬…… キレイな靴は“幸せ” を呼び、 その反対に、汚れている靴は“不幸せ”を呼ぶから。 だから、靴はいつもキレイにしていなさい』 耳に残るのは、優しさが染み渡る透き通る声。 だから、私の靴はいつもキレイだった。 幼稚園でいくら泥んこ遊びしても、 お母さんは、次の日にはピカピカな靴にしてくれた。 そんなピカピカな靴を毎日履ける私は、 お母さんの言う通りとても幸せだったのに。 お母さんは私が中学生の時に、 父と幼い妹と、私をこの世に残して天国に旅立った。 キレイな靴を履いていたら幸せになれるよ……って言ったのに。 だから―――― その日から、家族みんなの靴をキレイにするのは私の役割になったんだ。
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