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ギシギシと余韻が残るゴールのすぐ下 私が見上げているのは 間違いなく、先輩の筈 声を聞かなくても 逆光で顔が見えなくても分かる 先輩はなんだか変わっちゃったけど バスケだけは バスケだけは、変わってなかった だから 「柏木先輩……こんばん、は」 トン、と軽く降り立った姿は 本当に素敵で もともと見目麗しい柏木先輩は バスケをしている時が一番輝いていた 目が離せなくなってしまう こんなに近付いたのはどれくらいぶりだろう 一年、いや、一年とちょっと 卒業してから先輩と会うこともなかったし 入学してからも、先輩は別人みたいだったし そんな時 ス、と伸びてきた手 目の前に差し出された先輩の右手 こ、これは ひょっとして 私を起こしてくれるた、た、た為? ドキドキしながら 私も、右手を差し出す 伸びきらない途中で、ソレはグイ、と捕まれて引き上げられた 同時に響いた先輩の声 「久しぶりだな、後輩」 あぁ、先輩の、先輩の声だ 懐かしく、スゴく懐かしく噛みしめる 私を右手一本で難なく立たせて そして目の前にいる 柏木先輩 リアル柏木 久しぶり、と言いましたよね 今、久しぶりって 私の事、覚えてくれてた、って事ですよね? 先輩、聞いていいですか? 「先輩、バスケ…… バスケしないんですか?」 聞かずにはいられなかった ずっと疑問に思ってきた事だもん 「お前、相変わらずダイレクトに聞くねぇ」 先輩はボールを右手で掴んだ そして、クルリと掌で回した後、人差し指を立てる その頂上でクルクルと回り始めるバスケットボール 「ほら、お前オフェンス」 ポン、と渡されたボール 「オレの事抜けたらなんでも話してやるよ」 抜けらた、って 先輩のディフェンスなんて かわせるわけが無い
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