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僕は、本当に真っ白になっていた。何も考えられない。
「この子は城崎桂斗。虎太郎くんと私の子供」
「こ・・・・虎太郎、愛美さんと結婚したいんだろ。桂斗君もいるんだし・・・・僕なんか」
僕はその場から逃げたくて、入口に走って行った。虎太郎は僕の手を掴んで離さない。
「僕は・・・不要だろ?邪魔じゃないか・・・離せよ」
「こうなるだろうと思ったけど・・・桂斗の事もあるし・・・お前に話したかった。とにかく座れ」
近くのイスに座らせた。
「雪兎くん、ごめんね。私のわがままで貴方に辛い思いをさせて・・・虎太郎くんとは中学の時に別れてるの。私も30歳もとうに越えてたし、相手は10代の坊やだったし・・・一人で子供は育てようと思って生んだの。虎太郎くんはその時から、ずっと貴方一筋だった。
貴方が『男の子だから』って虎太郎のプロポーズを断られてから、彼はずっと悩んでた。そんな虎太郎くんにつけ込んだのは、私の方。
虎太郎くんに、貴方を諦めないで、覚悟してお嫁さんに迎えなさいと言ったのも私。お別れする最後の夜に、子供を授かるとは思わなかったの」
「納得いかないか?」
「だって、愛美さんは、こたクンの事を好きだったんでしょ?だったら・・・」
「ごめんね、虎太郎が好きだから子供を産んだんじゃないのよ。わからないかもしれないけど、そういう割りきった関係だったの」
「分かんないよ。割りきった関係って何?」
「お金を出した愛人契約だったのよ。私は、当時売れっ子だったから、虎太郎にこずかいを出して、そういう関係になってただけ。たまたま子供が出来て、子供を生むには年齢的にリミットだったから・・・・この子を生んだの。私の単なるわがままよ」
「そんなの桂斗くんが可哀想だろ?虎太郎を好きだから・・・好きな男の子供を産みたかったからって言ってあげてよ」
「もちろん子供にはそういうわ。でも大人のエゴイズムで生れる子供もいるってことも現実はあるってこと。それはこれから雪兎くんは嫌でも見なくちゃいけなくなるわよ。
虎太郎、やっぱり真っすぐな子ね。穢れのない・・・。貴方が一途に思っていただけの事はある子だわ。
ただ・・・この世界にいると大人のエゴにさらされるわよ・・・純粋だとそれだけ傷つきやすい。虎太郎守ってあげないと・・・」
「わかってる。でも、だからって、桂斗をこのままってわけにはいかねぇだろ。養育費は払うし、それと・・・認知もする」
「・・・・・・」
愛美さんは黙っていた。
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