プロローグ

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「覚えてないのも無理はない。ニ歳の頃に一度、会っただけだからな」 八雲は微笑んだ。 それでも思い出せないのか、首を傾げた。 それと同時に、自分だけ覚えていないなんて、何だか癪だと思った。 「とにかく、パンフレットを見ておくように」 命令口調で言い残し、八雲は部屋を出た。 八雲が出て行ったあと、少しボウっとした。 すぐに我に返り、言われた通りにパンフレットを見た。 掲載されている校舎の様子は、行くときに見ることにした。 主に、一年間のカリキュラムを見ていた。 どれも、ありきたりだ。 九月に文化祭やら十月に体育祭やらと、イベントがある。 中学にあったプールは、八雲に紹介された高校にはない。 部活はあるみたいだが。 ―これは関係ないな。 葵は一切、部活に入る気などまったくと言っていいほどない。 バイトをするためだ。 もちろん、家のこともやる。 そうなると必然的に、部活はできない。 どんな高校なんだろうと、今からワクワクしていた。
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