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 正哉と藍が帰ったあと、幸人は焼酎グラスの氷をカラカラと廻しながら深いため息をひとつ吐いて項垂れた。  「急すぎる、かぁ…」  多恵はそんな幸人を見ながら、クスリと笑う。    「仕方ないわよ、あの子たちにとっては突然のことだもの。」  多恵は自分で入れた熱いお茶をすすりながら目を細めた。    「…大きくなったのね、あの子たち。写真で見せてもらったのはもうずいぶん前のことだったし。」  「ふっ。まさか、お前が十年以上も前から正哉と藍を知ってるなんて思ってないだろうからなぁ…」  「そりゃそうよ。本当に逢ったのは私だって今日が初めてだったわけだし。正直、手が震えるほど緊張したわ。」  多恵は湯飲みを掴んだ自分の手をじっと見つめた。  「今日は泊まって行くだろ?」  優しい眼差で言った幸人の言葉に、多恵は小さく首を横に振った。  「帰るわ、私はまだこの家の人間じゃないもの。二人が認めてくれてから堂々と泊まるわよ。」  最後は幸人を気遣うように明るい声で微笑んだ。  そんな多恵を幸人は、少し寂しそうな表情で見つめそっと肩を引き寄せた。
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