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 ふいに桐島の顔が浮かんできた。会社では普通に会話はするものの、あれから何だかぎこちない。たまに桐島は悲しそうな笑みを見せる。それが何に対してなのか、どうしてそんな顔をするのか、鈴那にはわからなかった。  加藤と関係を持つということ以外に変わったことはなく、いつものように会社に行き、仕事をこなす毎日。  佐藤から何度か食事に誘われたが、乗り気になれず断ってばかりだった。恩を仇で返しているような……そんな気分だ。  桐島や佐藤がいなかったら今の自分はここにいないし、どうなっていたかもわからない。食事くらいは行くべきだと思っていても、あの二人に挟まれたら自分はどうなってしまうのかと思うと、どうしても行くことができなかった。
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