明かされた秘密。【前編】

31/32
396人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
コクン、と瀬名は自分の固唾を飲む音を聞いた。 水上の視線は前を向いているのに、あまりにストレートな物言いは彼女の体を射抜いたかの様に思考を停止させる。 「……え、えと…」 頭が上手く回らない。 一方で、心臓の音は更なる高鳴りを増していく。 どうしてそんな事訊くんだろう、とか 手を握られたり抱き締められたりしたのに今更すぎる質問かも、とか 何で急に質問攻めにあってるんだろう、とか 頭の片隅で余計な疑問が過るが、肝心な答えはどんな言葉に乗せたらいいのか分からない。 (―――今、好きな人…) 逢いたいと募る気持ち。声が聞きたいと願う気持ち。 ふと気付けば思考は彼への想いで埋まっていて。 たった一人のひとの、たった一言に幾度も翻弄されてしまう。 彼がひとつ動くだけで、甘く心地好い感情が体中を満たして。 なのに、正直になれない、偽ざるをえない事への後ろめたさから苦い感情も広がっていく。 もし名前を付けるとするならば、 『好き』という二文字が、それに当てはまるのだろうか。 「…あの…」 言葉が続かない瀬名に、水上は緩やかな笑みを浮かべた。 「じゃあ、その質問はパスという事で。 次の質問。もし、今好きな人がいないなら、俺が彼氏として立候補してもいい…?」
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!