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「たっだいまー」
「只今戻りましたー」
事務所に新たに落ちたのは、男女一人ずつの溌剌な声。
「二人ともギリギリすぎるぞ。あ?いや、昼休憩一分過ぎてるな」
「厳しいねぇ星也は。
いやー、思いの外混雑が凄くてさ、やっぱりオープンしてすぐよりも落ち着いてから行った方がいいね」
「ひょっとしてマスター達、この間できたばかりの駅ビルに行ってきたんですか!
うわ、羨ましい!男一人じゃなかなか行けなくて」
「おい滝本、もう仕事時間は始まってる。遅刻してきたヤツに付き合うな」
帰社した保志沢とあやのが加わり、明るみに富んだ声が事務所を賑わせた。
瀬名は呆けていた自分にハッとし、慌てて弁当箱を包んでデスクへ駆け寄った。
付き合うという事は、ただひたすらに幸せ一本、まっしぐらな道ではない。
その陰で纏うものが必ずある。
自分の想いだけを突き抜けば良いのではなく、様々な感情との戦いや周囲への気遣いを忘れてはならないのだと。
付き合い始めて僅か数日、今までになかった課題を痛感せずにいられない瀬名であった。
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