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鳥の鳴き声が聞こえる。
スズメだろうか。
数羽が井戸端会議を繰り広げているのか、耳に届く鳴き声は幾重にも重なってやけに賑やかだ。
(朝…?)
瀬名の目がうっすらと開かれた。
重い瞼をこじ開ければ、次第に抜けていく眠気と引き替えに、靄がかっていた意識がクリアとなる。
(……あっ!!寝ちゃった!!)
飲み会の最中だったってのに。
そういえば前回参加した時も、途中で寝ちゃって閉店間際に起こされたんだった。
そう思い、瀬名は弾かれたように体を飛び上がらせた―――いや、飛び上がらせようと試みた。
が、全身が硬直し身動きが取れない。
まるで鎖に繋がれている感覚だが、無機質な冷たい質感はなく、むしろ人肌のような穏やかな温もりだ。
「……え?」
瀬名の思考までもが固まった。
今現在の自分の居場所と“鎖”の正体に気付いて、瀬名の頬はみるみる真っ赤に熟れていく。
全身の右側面に当たっているのはベッドのシーツ。
背後には愛しき彼の寝顔が、自分の頭と平行して並んでいる。
鎖の正体はその彼から伸ばされた腕だ。
瀬名の小さな体は、背後の彼の胸の中にすっぽりと収められ、彼女の腹部でクロスされた腕が頑丈な鍵と化していた。
服は、着ている。
今が朝で正解なら、昨晩身につけていたものと同じ、ロング丈のチュニックとレギンスパンツだ。
だけど、どうして自分はベッドに横たわっている?
それも彼に後ろから抱き締められる形で。
「み…っ、みなか…っ」
瀬名が彼の名前の一部を何とか声にすると、それに反応して腹部の鍵が緩まった。
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