君の名は。【後編】

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*** 鳥の鳴き声が聞こえる。 スズメだろうか。 数羽が井戸端会議を繰り広げているのか、耳に届く鳴き声は幾重にも重なってやけに賑やかだ。 (朝…?) 瀬名の目がうっすらと開かれた。 重い瞼をこじ開ければ、次第に抜けていく眠気と引き替えに、靄がかっていた意識がクリアとなる。 (……あっ!!寝ちゃった!!) 飲み会の最中だったってのに。 そういえば前回参加した時も、途中で寝ちゃって閉店間際に起こされたんだった。 そう思い、瀬名は弾かれたように体を飛び上がらせた―――いや、飛び上がらせようと試みた。 が、全身が硬直し身動きが取れない。 まるで鎖に繋がれている感覚だが、無機質な冷たい質感はなく、むしろ人肌のような穏やかな温もりだ。 「……え?」 瀬名の思考までもが固まった。 今現在の自分の居場所と“鎖”の正体に気付いて、瀬名の頬はみるみる真っ赤に熟れていく。 全身の右側面に当たっているのはベッドのシーツ。 背後には愛しき彼の寝顔が、自分の頭と平行して並んでいる。 鎖の正体はその彼から伸ばされた腕だ。 瀬名の小さな体は、背後の彼の胸の中にすっぽりと収められ、彼女の腹部でクロスされた腕が頑丈な鍵と化していた。 服は、着ている。 今が朝で正解なら、昨晩身につけていたものと同じ、ロング丈のチュニックとレギンスパンツだ。 だけど、どうして自分はベッドに横たわっている? それも彼に後ろから抱き締められる形で。 「み…っ、みなか…っ」 瀬名が彼の名前の一部を何とか声にすると、それに反応して腹部の鍵が緩まった。
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