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―――キキキーッ
タイヤの擦れるブレーキ音。
人々の「逃げろ」という叫び声と「キャー、危ない!」という悲鳴。
それに反応をして何事かと振り返った時、目の前は、オレンジ色の光で包まれた。
眩しさに、ギュッと目を強く閉じると、
「危ない!」
男の人の声と、
―――ドンッ
何かのぶつかる音がした。
背中を押された弾みでアスファルトの上に倒れ込んだあと、目を開けると、凹んだボディ、割れたサイドミラーやガラス。
そして、
近くの高校のロゴ入りのバックを肩から下げた男子高校生が血を流して横たわっていた。
「い、いやぁあああ!お兄さん、死んじゃいやだぁあああ!」
まだ小学生だった私は、半狂乱になってお兄さんを揺さ振っていた。
「大丈夫。死なないから」
泣きじゃくる私にお兄さんは子供心でもわかるほど無理して笑みを浮かべていた。
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