倉橋和也の日常Ⅰ

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◆◇◆ ――ヴゥゥゥ、ヴゥゥゥ。 チゲ鍋御膳も終盤に差し掛かった頃、不意にテーブルの端で携帯電話が震えだす。 パカッと明るくなる待受画面に、一瞬ビクッと心臓が跳ねた。 摘んでいた豚バラ肉を手早く取り皿へ移し、軽く手を拭いてから電話を取る。 ああ、もうそんな時期だったんだ。 口の中の辛みをお茶で落ち着かせつつ、開いたメールをグイッと目に近付ける。 高校の同窓会のお知らせ。 帰省シーズンに合わせて毎年五月の連休に開かれるんだけど、ここ数年ずっと行ってなかったりする。 確か……大学卒業して二年目までは行ってたかな。 そのあとはホント、何となく行きそびれちゃってさ。 ああいうのって、一回行かないとその次って二の足踏むんだよね。 俺だけかもしれないけど。 迷わず打ち込んだ返事は、やっぱり去年と同じく「欠席」を伝える文章と、適当な挨拶で終わる。 が――――
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