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桐原君の家に行くには、タクシーより電車に乗った方が明らかに料金は安いだろうけど……私には裸足のまま電車に乗る勇気がなかった。
タクシーに乗っている間、胸が締め付けられる思いでいっぱいだった。
理紗が、桐原君のことをすごく好きだってことは痛いほどよく分かった。
でも、ちょっと約束を守れなかったぐらいで、あんな風に怒るなんて。
……異常としか思えない。
理紗は桐原君に対して、何をそんなに怯えてるんだろう。
彼の機嫌ばかり窺ってるように見えるよ。
……捨てられたくないから?
でもこれでは、木綿先輩を自分に置き換えて考えると、例え私が病気になっても、桐原君絡みの約束は必ず守らなければならないんだと思うと、先が思いやられる。
私、桐原君に関わるのは……もうやめよう。
木綿先輩と理紗と約束した旅行を最後に、彼に関わるのはもうやめよう。
私は心にそう決め、タクシーから流れる景色を目にしながら、知らぬ間に大量の涙が流れ落ちていた。
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