第1話

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 水筒を買ってきた。箱には真空断熱ケータイマグっていうかっこいい文字が躍っている。寒くなってきたので学校で温かいものを飲もうという計画なのだ。  「缶コーヒーの数百円も毎日だと馬鹿にならないからね」  そんなことを言いながら健太はオニューの水筒を友人の星崎に見せ付けていた。  「真空断熱だから夕方になっても熱々なんだぜ」  健太が高性能を軽く自慢しだしたのでイラっときたのか、星崎は真顔になって返答する。  「自然は真空を嫌う。神は空間を物質で埋めることによって創造をなした。真空は神への冒涜的挑戦である」  健太はその意見を軽く聞き流しながら、水筒の中のゴールドブレンドをダバダバと飲んだ。その瞬間である、水筒内の真空部分が膨らんで水筒が破裂。中から黒いもやが出てきて教室内を包み込んだ。そして光を伴った声が響く。  「かつてお前たちの先祖は天にも届かんとする塔を作り私に挑戦した。私は塔を破壊した。その戒めを忘れ、今度は真空の水筒か?私はそれをも破壊する」  こうして人類は真空断熱の水筒を失い、健太の小遣いは缶コーヒー代として消えうせることになったのである。
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