プロローグ

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神宮寺は全国区の超高校級スラッガー。強豪校で一年生の頃からレギュラーとして試合に出場し続け、勝つのが当たり前の県大会でも、聖地甲子園でも、他県の強豪校との練習試合でも柵越えを量産した。 なお、大庭も一年生から柵越えを打っていたが試合数ーー特に強豪校とのーーが少なく、そもそも比較するべきではないと言われていた。 この二人の対決は共に打点を上げ、数字だけを見れば互角だったが、勝敗を決定したのは他のメンバーの実力の差だ。 公立の進学校でそこそこ野球が出来る程度の選手と、強豪校で全国から野球をするために集められた選手。 その差は同じ高校生とは思えないほど圧倒的だった。 実はこの時、勝敗がほぼ決した試合の中で、後に球史に語られる好敵手の出会いがあったのだが、再び二人が出会うのは五年後の話。 もしかしたら夢が叶うかもしれない。 そんな淡い期待は、分厚い現実の壁に阻まれた。 そして知る。 世の中には、素質を持って生まれた選ばれた者がおり、一般人には決して越えられない現実と言う名の壁があることを。 それから丁度二年後。 彼らーー桜甲高校野球部は、一つ上の舞台ーー県大会ベスト8で再び優勝候補筆頭とぶつかった。 当時一年生だったメンバーは主力となり、大番狂わせを狙っていた。 その中には、二年前の試合に敗戦処理としてマウンドに上がった小柄なーー二年前からほとんど伸びなかった投手もいた。
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