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ありふれたシンプルな真っ白なお皿。
その上に、ふっくらと焼かれたハンバーグと付け合わせのにんじんやアスパラガスなどが、彩りよく盛り付けられる。
何時間もかけて煮込まれたデミグラスソースを鍋から掬うと、淳平さんはハンバーグに惜しげもなくたっぷりとかけた。
最後の一滴が落ちるまで見守る、真剣な横顔。
その横顔に、トクンと心臓が跳ね上がった。
―――そして、
「……よしっ……」
無意識に彼の口から零される、いつもの決めゼリフ。
きっと、淳平さん本人ですら気付いていない。
お客様に出す料理やデザートを仕上げた時に、彼が必ず口にする一言。
その小さな呟きに気付いているのは、世界中できっと私1人だ。
今日も変わらずに発せられた彼の一言を耳にして、私は1人口元を緩ませた。
「……何、笑ってんの?」
訝しげな顔で、淳平さんが私をジロリと見る。
「いえ……」
「これ、3番テーブルのお客様に。」
「はい。」
私は、同じ様に丁寧に盛り付けられた2人分のハンバーグのお皿をトレイに乗せて、3番テーブルへと運んだ。
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