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──覚えてるよ。
いつも優しそうに笑ってたけど、ときどき伏せる睫毛に影がひそんでいたことを。
そんなものを自分以外の人の中に見つけたのは初めてだったから、気になって仕方なかったの。
寂しそうとか、悲しそうとか、そんな単純な言葉じゃなくて。
あの時は、あなたに誰か優しい人が寄り添っていてくれたらいいのに、って思ってた。
だけど時間が経つにつれて、私の心の中は少し複雑になってきちゃったよ。
あなたがいつまでも影を抱いているから──私がそれを吸い取ってあげられたらな、なんて。
今にも消えそうだった儚い想いに、だんだん切実な痛みが加わってきた。
そうしてついには、今にまで至ってしまった。
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