第1話

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 そこは街の中心部から離れ、坂を登った先にある、いくつかの飲食店の入った施設の屋上だった。建物自体はさほど高くはないが、丘陵の上にあるために、街全体を見渡すことができる場所。  眼下には丘付近にある住宅街、少し先に視点を移すと歓楽街、遠くに視線を変えれば郊外にある遊園地の観覧車、展望台を有するタワー、さらにその先には名も知らぬ山脈が望められた。私がこのような絶景を独占でき、気軽に訪れることができる場所をしっているのは、この施設で飲食店を営む先輩に教えて貰ったからである。   私と彼女は、あたかもここを二人だけのために残された街の一角とみなし、街を歩くことに疲れるとここへ来るのが常だった。
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