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「……ありがと」
「おう」
私の言葉を聞いて、長瀬がその腕から解放してくれた。
離れ際、ふと香った長瀬の匂いが、また私を揺らしていく。
もっと近くでその香りに触れたことだって、あるのに。
どうしてだろう、これまでよりもいっそう強く、意識してしまう。
何事もなかったみたいにさっきまでの会話に戻った長瀬に合わせて、私も普段通りを努めて歩く。
心の中では、またぐるぐると同じ問答が繰り返されているのを隠して。
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