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 進駐官養成高校に嫌な噂が流れていた。  お決まりの敵国スパイの噂(うわさ)である。常時戦時体制下にある日乃元皇国(ひのもとこうこく)では、どんなにちいさな職場や学校でも、この噂を聞かない日はなかった。アジア系の美人が職場にやってくれば氾(はん)帝国の女スパイ、白系の男性ならエウロペ連合やアメリア民主国のスパイといった具合である。  この場合も、タツオが噂の中心だった。  無理もない。学年1位のジョージはエウロペの進駐官を父にもつ。誰の目から見ても純粋な日乃元人には見えなかった。さらに期末試験を控えて、タツオの3組1班はほかの2班と組んで学習チームを組んでいた。スリランの第7班はウルルクからの亡命者の生徒がそろっている。こちらも明らかに外地の匂いがする。おまけになぜか天敵・東園寺崋山(とうえんじかざん)の双子の妹、彩子(さいこ)がいる1組2班までいるのだ。陰謀説を刺激するメンツに不足はなかった。
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