1773人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
和也さんは、さっきまでのクールな会社の笑顔とは違い、プライベートの柔らかな笑顔を浮かべて歩いて近づいてきた。
「璃子」
「……和也さん」
「璃子の食べたい美味しいもの食べて帰ろう」
「……ぅん」
あたしは、溢れそうな涙のせいで塞がった喉の奥から、小さな声を出して返事をした。
和也さんは、あたしの腰に手を回すと、そのままあたしを連れて歩き出した。
「璃子、何食べたい?」
「和也さんは?」
「俺?そしたらこのままベッドに直行でしょ」
「え゛!?」
あたしは、滲んでいた涙が一気に引っ込み、声にならない声を出して、和也さんを見上げた。
「冗談だよ」
和也さんは、目尻を下げて、くしゃっとした笑顔を向けた。
……このギャップ。
会社とプライベートのスイッチの切り替えが、あたしの心をキュンと言わせる。
……さすがボスキャラ。
そもそも攻略法なんか無いんだから。従うしかないんだから。ねぇ?
なんて、もう1人の自分と頷きあった。
「璃子、何がいい?」
「ホカホカのご飯!」
「よし!じゃあ、ご飯の美味しい店に行こう」
「うん♪」
和也さんとあたしは、ふたりでくしゃっとした笑顔を見合わせて笑った。
最初のコメントを投稿しよう!