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和也さん……
あたしの気持ちは、ぐちゃぐちゃだった。
ほかのチョコレートだったら、まだ笑って『誰にもらったの!?』なんて言いながら笑えたのに……
よりによって、麗香さんが手に入れようとしていた、非売品のチョコレートを持って帰って来るなんて……
あたしは、チョコレートの箱を見るだけで、胸がギュッと締め付けられた。
たったひと言、
「麗香さんに会ってたの?」
って聞けば済むことなのに、今のあたしは、それすら聞くことが出来なかった。
聞いて、もし、会っていたとして……
『会っていた』と言う事実を受け入れられない上に、その事実が、あたしを傷つける。
例え、会っていなかったとして、本当に隼人さんからだったとしても、新たな疑問が生まれ、そして、和也さんを疑ってしまった事実が残る……
前にも後ろにも進めないあたしを、わき上がる嫉妬と疑惑が、じわりじわりと締め付けていた。
着替えて出てきた和也さんが、仕方ないなぁ~って表情で、キスをしようとしたのを、初めて拒んだ。
チョコレートの箱を見るだけで、あのパーティーの夜の麗香さんの表情と眼差しが思い出された。
夜、ベッドに入っても、目を閉じれば、ふたりが寄り添う姿が想像されて、あたしの睡眠を妨げた。
昼間、仕事の途中で、ふとした瞬間、『チョコレートを手に入れる』と言い放った麗香さんの声や表情が、あたしを取り囲んだ。
そして、ゆっくりとあたしを弱らせていった。
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