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バレンタインデーから数日が経ち、あたしの不安も疲労もピークに達し始めていた。
そんな時だった。
「桜井くん!ちょっと」
明らかに機嫌の悪い課長に呼ばれた。
「はいっ」
すぐに返事をして駆けつける。課長とは、以前の宮前さんとの一件以来、あまり折り合いがよくない。もともと相性が合わない関係なんだろうとも思う。
だからと言うわけではないが、これ以上、関係が悪化しないように、課長からの仕事は、細心の注意を払ってやってきていた。
「困るんだよ。この資料、1枚抜けてる!すぐに作り直して!」
「あの、これは省くと連絡いただいた1枚ではありませんか?」
「そのあと、やっぱり入れるように言っただろう!ちゃんと聞いてたのか!?」
「申し訳ありません。すぐに作り直します」
多分、課長は、ほかの事でもストレスを感じていたのだろう。明らかにちょっと八つ当たり感はあったし、突然の言い分に納得いかない部分もあった。
だが、これ以上の言い合いは、今後の人間関係を考えても無意味。謝る事もお仕事のうち……と、判断したあたしは、課長に素直に謝った。
会議まであと30分。
遠慮なく鳴る電話は、村上姉さんが、『任せて』って言って全部処理して助けてくれた。あたしは、全力で差し替えを急いだ。
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