ずっとそばにいてくれたね 第31話

28/40
1537人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
******** ……ったく!誰と飲んでるんだよ!? 俺は、イラつきを感じていた。 璃子は、会話の端々に出てくる松本さんの存在を、まだそんなに飲めるはずのないアルコールで必死に流し込んでいた。 「拓にぃおいしいねぇ~」 気まずい空気を変えようと必死に俺に話しかける。 「あぁ、相変わらずうまいな」 返事をすると、璃子は、安心したかのように、ふわりと笑顔を溢した。 柔らかな笑顔は、見ているだけで癒される。 だが、璃子の心を本当に独占している『彼』の存在に、チリチリと嫉妬を覚えた。 璃子は、愚痴り方も知らずに、零れ落ちそうになる本音を、酎ハイと一緒に飲み込んでいた。 思っていた通り、たいして飲めない璃子は、引っ越しの疲れもあってか、2杯目の半分を過ぎた辺りから、ゆっくり酔いはじめた。 「大丈夫か?」 「うんっ大丈夫!」 「まだ食べるか?」 「ううん。もう無理」 大概食べたとは思うが、璃子は、頬杖をついて、瞳を閉じたまま、口元には微笑みを浮かべていた。 俺は、おばちゃんに『お愛想』を告げて、支払いを済ませた。 「璃子、帰るぞ」 「うんっ」 「立てるか?」 「うんっ」 椅子から立ち上がらせたが、すでに千鳥足だった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!