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やはり電話は舞のイタズラかと疑ってしまうのだが、果たして俺はこれにどう対処するべきなんだろうか。
あまり仲間に対してこんな事を思いたくもないが、もしこれが冗談だとしたらタチが悪過ぎてかなり笑えないレベルだ。
だがもし舞の言葉が本気だったら。
それを想像した瞬間に全身がゾワっと寒くなり、これがクーラーの寒さなのか、はたまた笹原さんを少しだけ怖い存在に思ってしまったからなのか……。
どちらにしてもこのまま二人きりで舞たちを待たなければならないので、俺は意を決して笹原さんから何か聞き出せないかを探ってみる事にした。
「そ、そういえばさっきのスタッフさん達の態度は変でしたよね。普通は所属しているタレントさんには挨拶するのが基本なのに、みんな道を避けて歩いてたと言いますか」
さすがに舞が離れろと言ってましたなんて口が裂けても言えないので、先ほど気になったところから話を切り出した。
「そうでしょうか?私個人の見解ですが、実力のない人にはスタッフさんも挨拶する必要がないと思ってる方が多いですからね。そこは仕方ないんじゃないでしょうか」
「いやいや!笹原さんは絶対に凄い人ですよ!俺なんかの太鼓判なんか評価に入らないかもですけど、きっと舞たちも会えば分かってくれるはずです」
「ふふっ。上谷さんは本当に優しいんですね。ただ……もっと違う話が聞きたいのなら、直接聞いても構いませんよ?」
その刹那にバクッと心臓が飛び跳ね、笹原さんの浮かべる優しい笑顔が一瞬だけ初めて会った時の舞と重なってしまった。
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