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突然だが、この世には必要の無い物など無い、と俺は思っている。
もちろん偽善的な意味ではない。
弱者は強者に踏み潰されるため、
悪は正義に倒されるため、
そんな風に常に世界は必要な物で溢れているのだろう。
だから……
「いやぁ素晴らしい!素晴らしいですぞ勇者どの!!」
この目の前で俺を褒め称えている国王も、
俺が先程倒してきた魔王も、
傲るつもりは無いがこの俺も、
この世に必要とされるものなのであろう。
そんな考えと共に出てきそうになった皮肉な笑みを顔に出す前に、
しっかりと悲しげな笑みへ切り替える。
「いえ、皆の犠牲が無ければ倒すことは出来ませんでした…
実際僕もギリギリでしたから、
倒せたのはただただ運が良かったことと皆のおかげでしょう」
まぁ、もう流石に分かるだろう。
先程の国王の言葉から推察できるように、俺は勇者である。
それも先程目標を達成したばかりの。
ついでに言うと一人称まで変えて猫かぶりをした、勇者である。
「いえいえ、それでも魔王を倒したことには代わりありませんよ!!
素晴らしいですぞ!!」
というか正直中年親父に褒められたところで何も嬉しくない。
さっさと褒美を渡してくれないだろうか、この国王は。
「いえ…それより志半ばで死んでいった仲間たちを早く供養してあげたいので今日のところは…もう」
つっても俺は供養するつもりなどまったくないが。
「おぉ、そうであった…犠牲となった者達も多くいるのであったな…
分かった、お開きに…とその前に褒美をとらせよう。
勇者どのへの褒美は…」
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