恋人

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ゆいと越石が出て行ってから、俺は少なからずイライラしていた。 …越石?…新入社員だな。 ゆいと面識があるのか、なんだか馴れ馴れしくなかったか? しばらくすると、池口が戻り、市川がことの次第を話す。 「越石さんって、すごいイケメンでしたよね?ゆい先輩のことは知ってたみたいですけど。」 「そりゃ知ってるだろ?先週、勝野課長が騒ぎに来たとき、越石への資料、室井さんが持って行ったんだし。それに、室井さんは社長の秘書だし、知らないヤツなんていないんじゃね?」 「…ですよね。あー、でも先週、私が資料届ければ良かったー!」 …そういう事か。 それなら、ゆいと越石を引き合わせたのは俺のせいか…。 またつまらないことに苛立つ。 書庫まで一緒に入ってなければいいが…。 しばらくして、ゆいが資料を手に戻ってきた。 事務所に入った瞬間、何か違和感を感じた。 嫌な予感がする。 俺に鍵を返す手が少し震えたような気さえした。 …気のせいかもしれない。 「…すぐにみつかったか?」 無難な言葉を掛けたつもりだ。 ゆいは目で何かを訴えているようにも感じたが、はいとだけ返してきた。 …何があった? 今すぐにでも問いただしたいが、出来るはずもなく、イラついた気持ちを抱えたまま昼休みまで待つことにした。
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