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第三章 錬成の鬨
身体が思うように動くようになるのに、三日の時間を要した。
凍傷を考えれば、それでも驚異的な回復力と言えよう。
カナンの親身な介抱は有り難くもあり、優しかった亡き姉を思い出す為か、酷く億劫でもあった。
「カナンは……嫌いだ」
ガルンはそう呟いて頭の中に浮かぶ、太陽のように笑う少女の顔を掻き消す。
しかし、ここ数日に見続けた残光は瞳に焼き付き、全く消えそうにない。
動かない身体で常に見続けていたのは、彼女の笑顔ばかりだ。
頭を振って重たい足を進める。
辺り一面雪景色。
山深い岩場も一面白で埋め尽くされている。
その中を点々と足跡を残しながら、ガルンはゆっくりと前進していた。
吐く息は真っ白だが、寒さを全く感じない。
存在が変質した為か、怪我の影響で脳のリミッターの何かが外れた為かは分からない。
だが、今のガルンにはそれは有り難い現象だった。
身体の機能が低下しようと、それを無視して身体を動かし続ける事ができる。
少年は三十センチはある積雪の中を、黙々と進んでいった。
「絶対このルートのはずだ……」
疲れを感じないと言っても体力は奪われていく。
寒さにより見る見る顔色は悪く成り、自由に動かなくなってきた身体に苛立ちを感じる。
それでもガルンは周りを気にしながら雪道を進む。
ガルンが進んで行く道は、例の三人組が逃げたルートと一致していた。
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