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参詞“英雄騎士” #3
だが、それではこの切り返しの速さの説明が出来ない。
テレポートならばガルンが転移現象で生じたような、再認識時間が発生するためだ。
それを無くすならば、一か八か敵がいるかを確認もせずに剣を振るう手段しか無い。
空振りするリスクを背負った攻撃手段。
しかし、カナンの戦士としての勘が否と告げる。
金属が奏でる甲高い音が空に響いた。
空に空気を切るような音を立てながら、飛んだ物体は放物線を描いて大地に突き刺さる。
「驚くべき反射神経だな」
デュランダークは少々呆れ気味に、大地に倒れているカナンを見た。
聖剣の一撃を、あの刹那で小太刀で防御した動きは驚嘆に値する。
しかし--その強力な一撃は、小太刀を根本付近からへし折っていた。
大地に突き刺さったのは、へし折れた小太刀の刀身である。
「何か力を使ったよね?
テレポートじゃない。でも、一瞬で視界の外に移動してた。まるで……」
カナンはそこで言葉を切った。
(まるで……時間が止まったような違和感)
思い詰めたようなカナンの考えが読めたのか、デュランダークは苦笑いを浮かべる。
「私の能力“シグナル・ロスト”を受けた敵は、大半その能力の意味が分からずに、混乱して自滅していたな」
「……」
「悪いがこちらも急ぐ身。終わりにさせてもらおう」
聖剣が振り上がる。
それは、まるで死刑執行を行う断頭台のように、鈍い光りを携えていた。
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