終章 月の無い空に世界蛇は哭く 終詞“壊れた修羅と清いなる姫”

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それで冥魔黎明衆と渡り合わなければならない。 「やれやれだな」 クライハルトは肩を落として――徐に天獄剣をガルンの脇腹に突き刺した。 「はっ……?」 唖然と脇腹に刺さった剣先を見つめる。 「ガルン?!」 パリキスは青ざめた顔で口元を押さえた。 いきなりの行為に全員面食らう。 ガルンは脇腹を押さえて片膝を付いた。 押さえた手から血が溢れ出す。 「てっ……てめぇ?! 何のつもりだ……」 「そんな不確かな情報に命運を賭ける訳にはいかんな。今は世界の危機だ。もっとも公算の高い策を行うのが当然だ」 「それが……パリキスを殺して撤退だって言うのか! ふざけるな、ふっざけぇるなぁ!!」 ガルンは絶叫を上げた。 その叫びが蒼い光を呼ぶ。 身体から放たれた光が、クライハルトの光の輪を打ち砕いた。 「……!!」 絶句する周りの三人を無視して、ガルンは荒い息を吐きながら立ち上がった。 顔色が明らかに悪い。 よろめくのを我慢して脇腹を押さえる。 「無理は止せ。肝臓を貫いた。このままなら五分で死ぬ。姫を殺して地上で治療を受けるしかないぞ」 クライハルトは無表情でそう宣告した。 天使の羽根が神々しく広がる。 まるで神の啓示のように見えるのが、皮肉なものだ。
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