終章 月の無い空に世界蛇は哭く 終詞“壊れた修羅と清いなる姫”

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「通さん! 天地・転!」 空間捕縛の不可視の力がブレイローを包む。 だが、拘束した筈のブレイローは、いつの間にか“クライハルトの真横に存在していた”。 愕然とそれに目を向ける。 「無駄無駄。タイムラグゼロでもなお遅い! 冥法・水咒“弾ける雹雪”!」 ゼロ距離からの攻撃。 目の前で爆散したのは水の塊だ。 その飛沫がクライハルトを飲み込むと、一瞬で凍りつく。 天使の防御陣により、凍りは身体に完全に付着する前に弾き飛ばしたが、冷気を防げていない。 凍傷から呪いが身体を蝕んで行く。 精神体が蝕まれる負荷に、クライハルトは顔を歪めた。 その眼前に迫る白い巨人。 ガルンを吹き飛ばしたのと同じ、幽冥獣との連携攻撃。 空間を渡る二つの右腕が炸裂した。 吹き飛ぶクライハルトを尻目に、ブレイローはガルンに向き直る。 「さてと、次はお前の番さ!」 猛然と進む顔には自信が溢れている。 当然だ。 ブレイローの行動速度は現在に無い。 彼の能力“未来回廊”は、数秒先の未来に自分を量子シフトさせる。 ブレイローと戦うには、見て戦う事は意味を成さず、その戦闘運動から先読みで攻撃でも仕掛けるしか無い。 それですら――ブレイローに取っては“数秒前に起こした行動”でしか無いのだ。
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