第2章 セシル・ティア~儚くも永久の物語り~

208/216
61人が本棚に入れています
本棚に追加
/217ページ
その一言が、幼き頃従者が私に言った、暗く重い闇と、硬くきつい鎖のような言葉を意図も簡単にほどいてくれた。 セシルは優美な仕草でハーブティーを飲むクラウスの横顔を見つめた。 (クラウス、貴方がいてくれてよかった...。) セシルの視線に気づいたのか、クラウスが横目で目が合うと、ふっと目を細め、セシルにだけわかるように、カップのふちを唇と舌先で艶かしく舐めてみせた。 そのいやらしさにセシルは頬が熱くなり、落ち着かなくなった。 クラウスとの口付けを思い出したからだ。 あれ以来クラウスと口付けをしていない。 そのせいか、急に口付けが欲しいと思い始めた。  セシルはそんな自分が恥ずかしくて視線をそらした。 「そうだ、トリス喜べ!」 突然、思い出したようにライルは声をあげた。 「何だよ急に?」
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!