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その一言が、幼き頃従者が私に言った、暗く重い闇と、硬くきつい鎖のような言葉を意図も簡単にほどいてくれた。
セシルは優美な仕草でハーブティーを飲むクラウスの横顔を見つめた。
(クラウス、貴方がいてくれてよかった...。)
セシルの視線に気づいたのか、クラウスが横目で目が合うと、ふっと目を細め、セシルにだけわかるように、カップのふちを唇と舌先で艶かしく舐めてみせた。
そのいやらしさにセシルは頬が熱くなり、落ち着かなくなった。
クラウスとの口付けを思い出したからだ。
あれ以来クラウスと口付けをしていない。
そのせいか、急に口付けが欲しいと思い始めた。
セシルはそんな自分が恥ずかしくて視線をそらした。
「そうだ、トリス喜べ!」
突然、思い出したようにライルは声をあげた。
「何だよ急に?」
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