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「あ、私そろそろ帰りますね」
気を利かせてくれたのか残っていた酒を飲み干すと優子ちゃんがカバンを持ち立ちだす。
「いいよ、コイツの事は気にしないで……」
差をつけるわけではいが、同じお客様でも優弥と優子ちゃんでは違う。
優子ちゃんは純粋に俺の作るお酒と会話を楽しみに来てくれているが、優弥は単に冷やかしに来ているようなもの。
まだ営業時間ないなのにお客に気を使わせるなんて……
すっかり優弥のペースにのまれプロ意識がどこかにぶっ飛んでしまっていた。
自己嫌悪に陥りながらどうにか優子ちゃんを引き留めようと考えていると
「いえ。本当にもう帰ろうと思っていたんで……。明日も仕事だし、また来ますね」
嫌な顔一つせず笑顔で答えてくれる優子ちゃんの優しさを素直に受けることにし「ありがとう」と小さくお礼の言葉を口にした。
「ご馳走様でした。じゃあ、また。おやすみなさい」
あんなに邪魔をしたにも関わらず優子ちゃんは優弥にも愛想良く会釈して帰っていった。
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