背徳と欲望

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「どうした?」 『なんでもない』 「もしかして、今日会った藤堂とか言う男のことでも考えてたのか?」 違うのだと告げようとした唇に、無骨な指が押し当てられた。 「他の男のことなんか考えるな。今は俺のことだけを考えてろ」 顎を掴まれて上を向かされ、唇を塞がれた。 『んん…っ』 啄むような口吻けが繰り返される。 心地よくて、亮二は無意識に唇を開いてしまう。 『は……ふ……』 躯の芯がじんわりと熱くなる。 腰の力がガクンと抜け、くたっと弛緩した躯を預けた。 克幸の厚い胸板に頬を寄せて、熱い吐息を漏らす。  
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