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邪魔をされ、アキラが苛々を募らせているのは西洋甲冑越しでもよくわかる。突っ込んだパトカーを挟んで向こう側にいる天吾は、アキラとは違い嬉しそうにも見えた。
「どういうことだ天吾」アキラが声を荒げる。「飛火夏虫は生きているではないか!」
「おかしいなぁ。最初の一撃のダメージから計算して、確実に死に至る量の爆撃を浴びせたはずなんだけど」
片手でペンを弄び、天吾はさして驚く様子もなくヘラヘラと笑っている。そんな彼に目を向けている芦長の額から、冷や汗がこぼれ落ちた。
「まずいぞ瀬野」
「何だよ。何がまずいんだ?」
探偵の膝はガクガクと震えている。ここまで動揺している彼を見るのは初めてであり、大介は自分が思っているより状況は悪いのではないかと息を飲み芦長の言葉を待った。
「……何か勢いで突っ込んでしまったが、パトカーや教会の修理代は俺が払うのか?」
「それ今気にするところじゃねーよッ!」
戦場においても、大介のツッコミは冴え渡っていた。
「いや、大事なことだ。それならこれ以上の破壊行動はまずい。フェイルの奴ら……ゴホン。フェイルの方々にも外で戦ってくれるようお願いしなければ」
「うおぉーい! 何下手に出てんだよ!? 支払いに慄いてキャラ変えてんじゃねーか!」
「あの大きさのステンドグラスがいくらするのかわかっているのか?」
「緊張感が台無しだよっ!」
繰り返されるボケとツッコミ。流石にフェイルからも静止の言葉がかけられた。
「いつまでやっているつもりだ! 貴様らの漫才に付き合う気など更々ない!」
「とか何とか言って、付き合ってんじゃねーか」
悪戯な笑みを見せて、大介がアキラの後方を指さした。
「お陰様で救出成功だ」
ハッとなり、アキラが振り返る。そこにいたはずの優花はいつの間にかいなくなっており、気がつけば大介達と合流していた。
ここでアキラの怒りは頂点へと達する。
「舐めた真似をォォォッ!」
「まあまあ、一旦落ち着こうよ」
仲間の怒りを宥め、天吾は大介へ話しかける。
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