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◇
僕の携帯電話が鳴ったのは、どんなに訳を話しても兄貴が納得してくれず、ちょうど話題を捻じ曲げたいと思っていた時だった。
ポケットから取り出し画面を見ると、桜子さんからのメールだということがわかった。あぁ、こんなグッドタイミングで助け舟を出してくれるなんて、君はどこまで素敵な人なんだ桜子さんっ!
「もうアレだな。お前のパンツ引っぺがした方がはえーよ。脱げ」
「無茶言わないでよ愛希ちゃん! 俺達、まだ付き合ってすらないのに!」
「何馬鹿言ってんだ。恥ずかしがらなくても俺は男だ。ほら、脱げ!」
「あーれー」
なにやら向こうはお取り込み中のようだが、今の僕にはどうでもいい。一人で気兼ねなくゆっくり桜子さんからのメールが読めるってもんだ。
携帯電話を一旦食卓の上に置き、姿勢を正し二礼二拍手からの合掌。そして最後にもう一礼してから、僕はいつもメールを開く。桜子さんからのメールはそれぐらいありがたく、貴重なのだ。
恒例の作法を終え、僕はメールを開く。そして綴られた文字にゆっくりと目を通した。
『三途川友希へ✌📩😃犬鳴桜子は預かった〓💣〓返して欲しくば三途川愛希を連れて海陽学園の映画製作部部室まで来い🏫🏃‼』
何だろう。所々に挟まれた絵文字がかなり緊張感を削ぐが、桜子さんはこんなくだらない悪戯をする人ではない。つまりこれは――一大事だ!
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