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コンコンッ
そう思っていた矢先、二度目のノックが聞こえた。いや、期待しては駄目だぞ僕。期待すればするほど、ダメージは大きくなる。
宗太郎、桜子さん、サラヤンが見守る中、僕はゆっくりとドアノブを回し扉の向こう側を確認した。
――そこには、兄貴が立っていた。
「なんだよ。冷やかしか?」
「そんな言い方はないだろー。なんつーか……アレだよ。ほら……んっ」
そう言って、兄貴は僕に何かが書かれたA4サイズの用紙を突きつけた。それは、入部届。部活欄には映画製作部と書かれており、名前欄には三途川愛希と書かれている。
「ほら、どうせ誰も来てないんだろ? だから俺が入ってやるよ。仕方なくな」
「そんな理由なら結構だ」
ようやく訪れた好機。だが、僕はそれを自ら切り捨てた。
「おい友希! この期に及んで何言ってんだよ?」
「宗太郎は黙ってろ」
自分でも馬鹿だと思ってる。自己中だとも思う。でも、僕は当初の目的を捨てた訳じゃないんだ。
「兄貴。僕は『映画が作りたい部員』が欲しいんだ。仕方なくとかそんな理由なら、いらない。兄貴だって後悔する」
僕は勿論のこと、桜子さんも映画作りを楽しんでいる。宗太郎だってなんだかんだでこの部に居座っているのは、映画作りが楽しいからだ。
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