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シーン4 #2
「お待ちしてました皆さん。とりあえず座ってください」
促されるままに席へ腰掛ける僕ら。ヤマンバの姿はない。どうやらまだ来ていないようだ。ついでに言えば、春重は勿論いない。アイツは昼休みでも忙しいからな。パシリとかで。
「兄貴、ヤマンバ連れて来なかったのか? クラス一緒だろ」
「何だ聞いてないのか? ほれ」
言って兄貴は、自分の携帯電話を提示してきた。画面に表示されているのはヤマンバからの受信メールで、内容は『三日ほど天界へ帰ることになったからヨロシク』というシンプルなものだった。どうやら、神様が僕の頼みを聞き入れてくれたらしい。これでホームシックが治ればいいんだけど。
「あ、このメールなら私も貰いました」と、桜子さん。僕と宗太郎は当然貰ってない。それ以前に、アドレスを知らない。別にいいけどさ。
「では、本題に移らせていただきます」
ヤマンバの話題をやや強引に打ち切ると、桜子さんは自身の鞄に手を入れた。鬼が出るか蛇が出るかと西田片手に身構えていた僕だったが、彼女が取り出したのは有名レンタルビデオショップの貸し出し袋だった。
推測するに、中身はホラー映画の新作とかだろう。呪われた日本人形でも取り出すんじゃないだろうかと思っていたが、どうやら僕の早とちりだったようだ。ホラー映画くらいなら、目を閉じて耳を塞いでいれば切り抜けられる。よかったよかった。
「じゃんじゃじゃーん!」
自分で効果音を言いながら桜子さんが袋から取り出したのは、意外にもビデオテープだった。DVDが一般的となった現在、ビデオテープが置かれているレンタルショップはあまり見ない。まぁ、あるところはあるだろうけれど、好き好んでビデオテープを選ぶ人も少ないと思う。人それぞれと言われると、それまでだけども。
「おー! 何のビデオだ?」
「コレですっ! ばばーん!」
そうして彼女が見せたタイトルラベルに、僕らの視線が注がれる。そこには、こう書かれていた。
『呪いのヒデオ』
ヒデオって誰!?
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