第8話 甘い罠

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「あの優しい味が、藍井さんを作ったんですね」 ああ。 このひと。 笑うと幼く見えるんだ。 イケメンもいいけど、こういうベビーフェイスもいいな。 なんかキュンとくる。 ポーッと見ていると、 「あの写真・・・」 核心に触れてきて、どきりと心臓が跳ねた。 「誰かとキスしてた写真は・・・どこで?」 わたしは、駆け引きが出来ない。 全部顔に出るから。 だから。 「・・・あるパーティでのもので、差出人不明の誰かが会社に送ってくれたんです」 彼の瞳から目を逸らさずに答えた。 「・・・何処の誰かも分からない人が送ってきたものなんて、気味悪くなかったの?」 彼のポーカーフェイスからは、真偽を確かめられない。 「好く撮れてたから・・・わたしらしさも、出ていたし」 そう云って、彼を見つめる。 「でも最近の写真は・・・悪意が込められてそうで、怖いです」 はっきり言った。 「最近・・・って、どういう事?」 眉をしかめる、那須さん。 「最近も、写真が送られてるの?」 彼の言葉に頷いて、 「男性と2人で写るような撮り方で、メッセージも・・・」 脅迫状とは、さすがにここでは言えない。 「メッセージ・・・?」 顎に手を当てて考え込むと、 「藍井さん、もう少し詳しく聞かせてくれるかな」 身を乗り出してきた。 「ココじゃなんだから、どこかカフェでも」 そう言われ、どうしようか迷っていると、 「・・・」 彼の背中越し、離れた場所でルカの姿が見え、わたしに意味ありげに頷いた。 行けってことかな・・・ ルカはサングラスをして、帽子までかぶっている。 いつの間に・・・
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