不条理と言う名の奇跡 #2

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白い空間に黒い線があったとする。 それは正面から見ればただの線だ。 二次元上の線である。 しかし、その線に近づき、マジマジ見るとそれは黒い紐だった。 そうなると、それは厚さ、高さを持つ三次元上の物体に早変わりだ。 それは三次元物体を認識した事になる。 それは三次元を認識する眼があればこそだ。 では、その紐が四次元の物体だったら? 三次元認識しか出来ない人間の瞳では、それを紐までとしか認識出来ない。 四次元を見通す眼があれば、それを紐ではなく四次元の物体として捉える事が可能だろう。 その遥か高み――十二次元物体などになれば、知覚、理解の範疇外だ。 (根本的に……見えも理解も出来ないのならば……それに頼るのを棄てれば良い) ガルンは瞳を閉じるとネメシスの言葉を思い浮かべた。 怒りの沸点に再び火が灯る。 (こいつを野に放ったら……パリキスの災いにしかならない。こいつは此処で捻り……潰す) 身体から更に黒い炎が吹き出して行く。 溢れる炎は辺りを蜃気楼のように歪ませ、まるで新たな神域を造り上げたように変わって行った。 「焦りを感じるぞ“黒き戦鬼”。貴様を殺し尽くしたら、次は女だ」 ネメシスのその言葉を聞いて、ガルンは狂気的な笑みを浮かべる。 「そう……だ……貴様は敵だ。パリキスの敵だ。俺の敵だ。世界の敵だ。貴様の存在を否定する。排斥する。断罪する。骨の髄まで焼き尽くし……存在の形跡も残さず滅ぼし尽くす」
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