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じっと私の心の奥を見透かすように見つめながら刻也さんは頷く。
それを見て、私はふーっと息を抜くのにあわせるように、頭を撫でてくれていた手がスルリと降りてきて頬を包んでくれた。
温かなその手は、私に安心感を与えてくれる。
そっとその手に頬を乗せるように寄りかかると、親指が二度私の頬を擦ってくれた。
「お前の胸が触ってみたかっただけだって。お前だってただヤリたかっただけだろうってそう言われて。すっごくショックで、彼氏なんて二度とほしくないって思いました」
目を伏せる私の頬を少し強めに包むと、反対の手は私の手を握りしめてくれる。
――大丈夫。私にはこの手があるから、大丈夫。
ゆっくりと息を吸って、吐いて……また続きを話した。
「それから、ずっと誰とも付き合ったことないまま短大に行って。彼氏なんて、って思ってたのに……ある人が家に入り浸るようになりました」
きゅっとまた手を握りしめると、頬にあった手が下りてきて両手で私の手を包んでくれた。
無言だけど、彼のその態度が優しくて、頑張れって言われてる気持ちになる。
「気が付いたら彼は当たり前に私の家にいました。私の方も、実家は出てみたけれどやっぱりさびしい部分もあって。
一緒に居ても不快じゃないし、それに私には指一本触れない彼に安心感を抱いてた部分もあって、それを許していました」
そこまで言って、また呼吸する。
言いながら、本当に自分って馬鹿だって思って落ち込む。
なんとなく涙が零れそうになって……今の刻也さんの表情がどんなのか見ることが怖くて俯いた。
「ある晩、彼が珍しく私に近づいてきたかと思ったら、初めてキスをされました。びっくりして、でも無理矢理じゃなかったし、嫌じゃないかもしれない、なんて思ったんです。でも翌日、朝起きてみたら、……っ」
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