結:結ぶ恋(続き)

35/40
328人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
 「ほんとに、私で、いいんですか?」  「だーっ! もう、知らん!!」  叫ぶようにそう言うなり、抱きしめられて耳元で囁かれた。  「ずっと隣で居てろ」  ここまで言われて、ようやくこみ上げる熱いモノ。  私が、私自身がちゃんと彼に、刻也さんに求められてるんだって分かって、嬉しくて涙が出た。  「はいっ」  ようやく声に出せた返事は、泣き声で揺れていたけれど、今までで一番気合の入った『はい』だったに違いない。  私の人生に、ようやく初めての彼氏という存在が出来た。  その人は温かくて優しくて、私の大好きな人だ――  その日は、夕方ころに家に送ってくれた。  もうこれからは泊まれなんて言わないと言われて、それがあまりにも寂しくてがっかりした私は尋ねた。  「絶対に、ダメなんですか?」  もっと一緒に居たい。  そう思って尋ねると、刻也さんは逡巡した後、じゃあ提案、って言う。  「プティキャラ、全部終わるまで禁止」  「えぇーーっ」  ストレートに不満を漏らすと、クスリと笑われた。  「お前の気持ちは嬉しいけど……お前はもうちょっと男の事情を察する必要がある」  「男の事情……!? か、帰ります!!!」  ギャーっと叫びそうになった。  だってだって!  それってアレだってことくらいは、私にだって分かりますから。  車のドアを開けようと手を掛けて、シートベルトに止められた。  「うわぁあっ!」  「ククッ。お前、ほんと見てて飽きないなぁ」  「だって……」  「別に取って食いはしないから落ち着け」  「く、くく食いって!!」  言いながらクスクス笑われて恥ずかしくなる。  顔が熱くなって、両手で頬を挟んで冷やした。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!