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「ほんとに、私で、いいんですか?」
「だーっ! もう、知らん!!」
叫ぶようにそう言うなり、抱きしめられて耳元で囁かれた。
「ずっと隣で居てろ」
ここまで言われて、ようやくこみ上げる熱いモノ。
私が、私自身がちゃんと彼に、刻也さんに求められてるんだって分かって、嬉しくて涙が出た。
「はいっ」
ようやく声に出せた返事は、泣き声で揺れていたけれど、今までで一番気合の入った『はい』だったに違いない。
私の人生に、ようやく初めての彼氏という存在が出来た。
その人は温かくて優しくて、私の大好きな人だ――
その日は、夕方ころに家に送ってくれた。
もうこれからは泊まれなんて言わないと言われて、それがあまりにも寂しくてがっかりした私は尋ねた。
「絶対に、ダメなんですか?」
もっと一緒に居たい。
そう思って尋ねると、刻也さんは逡巡した後、じゃあ提案、って言う。
「プティキャラ、全部終わるまで禁止」
「えぇーーっ」
ストレートに不満を漏らすと、クスリと笑われた。
「お前の気持ちは嬉しいけど……お前はもうちょっと男の事情を察する必要がある」
「男の事情……!? か、帰ります!!!」
ギャーっと叫びそうになった。
だってだって!
それってアレだってことくらいは、私にだって分かりますから。
車のドアを開けようと手を掛けて、シートベルトに止められた。
「うわぁあっ!」
「ククッ。お前、ほんと見てて飽きないなぁ」
「だって……」
「別に取って食いはしないから落ち着け」
「く、くく食いって!!」
言いながらクスクス笑われて恥ずかしくなる。
顔が熱くなって、両手で頬を挟んで冷やした。
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